MLBの洞窟

いかに3000安打は達成されるのか

MLBの洞窟

4月23日の対ロッキーズ戦でタイガースのミゲル・カブレラが3000本安打を達成したのはご存じだろう。(動画別アングル)

かつてのチームメイトであるイグレシアスとのハグが特に印象的だったが、何より地元球場でファンに囲まれての達成はカブレラにとっても忘れられない瞬間だったはずだ。

MLBの洞窟

3000本安打はMLB119年の歴史で33選手しか成し遂げてない偉業であり、達成すればほとんど殿堂入りが確実となる。

そこで今回は、このマイルストーンを達成するのはどのような選手かを探るため、3000本安打の軌跡を3つの尺度で見比べてみよう。

デビューからの年数

まずは33選手がMLBでのキャリアをスタートした年からの安打数の積み重ねを見てみよう。下のチャートでは見やすさを考慮し、現役で達成したプホルスとカブレラに色をつけてある。

MLBの洞窟

この比較データで興味深いのは次の2点である。

1. どの選手もキャリアが長い

これは自明であるが、最も短いクレメンテやボッグスでも18年のキャリアがある。22歳でデビューした選手は40歳まで選手寿命が続かないと、そもそも可能性すら生まれないということなのだ。

2. 後半の失速度合い

おそらくこちらが3000本安打への最も高い壁なのだろう。つまりキャリア終盤(特に15年目以降)の選手としての衰えをいかに防ぐかが、最終的な安打数に最も影響していると考えられる。

特に顕著なのはイチローの例だ。誰もが知っている通り、イチローはデビューから10年連続200安打という前人未到の記録を打ち立てている。

実際にキャリア14年目までは最速ペースで安打を積み重ねていて、3000本安打達成にかかった年数もローズに次ぐ歴代2番目の短さだ。

また現役で見るとプホルス、カブレラは12年目までのペースが33選手中6位、8位と上位だが、その後大きく失速している。両選手はこれ以上は大きく数字を伸ばさないだろう。

一方安打数が共に4200本前後のローズ、カッブは20年近くペースをほとんど落としていない。30代後半に差し掛かっても全盛期と遜色ない成績を残せるというのは、常人のなせる技ではなさそうだ。

それでは次に、年齢別でも数字を見比べてみよう。

年齢別の比較

MLBの洞窟

先ほど3000本安打達成条件の一つは長いキャリアと述べたが、それはつまり若い年齢でのデビューを意味する。

上のチャートを意訳するなら、「23歳までにデビューしないと可能性はほぼないし、できれば20歳くらいからMLBで活躍するのが望ましい」といった具合だろう。

その上で18年以上の活躍がマストである点から、いかに狭い門かがわかるだろう。カブレラは20歳でデビューして今年で20年目、プホルスは21歳でデビューして今年で22年目のシーズンを迎えている。

またここでもイチローの異端さが目立っている。先ほどキャリア前半のペースが最速と述べたが、イチローはMLBデビュー年齢が27歳と誰よりも遅い。

イチローは3000本安打を達成している中で最もキャリア後半の失速が顕著な選手だが、年齢を考えれば無理もないだろう。逆に27歳から40歳までは最速ペースと考えるとなかなか異常である。

さて、ここまでは全ての選手をキャリア年数と年齢で揃えて比較したが、実際に達成した年代はバラバラである。そこで最後に、年代に揃えると同時に出身国も分けて見比べてみよう。

年代と出身国

少し情報量が多いが、下のチャートを見てほしい。今回は戦後(1945年以降)にデビューした25選手に絞ってある。

MLBの洞窟

まずは頻度を見てみると、1970年から2022年の52年間で25人が3000本安打を達成している。つまり約2年に一度のペースとなるので、思ったより間隔が短いと感じないだろうか。

また当たり前だが、達成選手の大多数(72%)はアメリカ出身であり、そのほかはイチローを除いて中南米の選手となっている。

このチャートから分かるのは、意外と昔からアメリカ以外の出身選手が3000本安打を達成していることや、最近になってその割合が増えていること。

特に最後に達成した4選手(カブレラ、プホルス、ベルトレ、イチロー)は全てアメリカ以外の国で生まれている。

ちなみに個人的には、ベルトレが通算安打数で一度イチローに抜かれ、またキャリア終盤に抜き返しているのが面白い。キャリアを通して安定した成績を残し続けたことを表している。


以上、3つのチャートを通して3000本安打達成者を見比べてみたが、いかがだろうか。もし他にも興味深い視点があれば教えてほしい。

ちなみに、それぞれのチャートはホバーすると各年の安打数も見れるので、選手同士を色んな角度から見比べてみると面白いだろう。

MLBの洞窟

--

ホームへ